土方カーブは、土木屋に必須の便利技術である。

 

建設業に携わってる者が、土方(どかた)カーブ(四分の一法とも)を知

ってるか知らないかでは力量にかなりの差が出てしまうだろう。

 

便利なツールだから道路や構造物にカーブが入っていたらすぐ頭に浮か

べてほしい。土木建設現場を預かる技術者であれば、ほとんどの人が知

ってるとは思うが、初心者や建築畑の方々にとっては意外に新鮮な情報

かもしれないので紹介してみる。

 

 

どんなものかというと、曲線の中心角が半分になると中央縦距は四分の

一の近似値を取るという性質を利用するものだ。

それを少し説明すると、円の一部を切り取った弓の形を想像してみてほ

しい。弦と弧があって、その弦と弧の初まりは点だから離れの距離は零

だ。進んでゆくにつれて徐々に離れが大きくなり、ちょうど真ん中で一

番大きく離れる。その真ん中の弦と弧の離れを中央縦距と呼び、円の中

心から弓の両端に線を引いた時に出来る角度を中心角と呼ぶ。

 

その弓の両端の点を、ここでは時計回りに見てBC (曲線始点), EC(曲

線終点)と呼び、円の中心と結んで扇形をつくる。扇形のBC、ECに接線

(中心線と直交する)をつけて伸ばして一点で交わらせるとき、その交

点をIPと呼ぶ。その交点の外角は扇の中心角と同じになる。

 

道路曲線と言えば、単心円(simple circle)の一部分を切り取って使うも

のだが、IA(交角) , BC (曲線始点), MC (曲線中点), EC (曲線

終点)と言った重要ポイントは交角(中心角)とR(半径)が決まれば

すぐに計算できるものである。

 

 

BC,MC,ECの間に入る中間点はいちいち計算して出さなければならない

のでちょっと面倒くさい。土方カーブはそんな面倒くさい中間点を出す

ときに使うものである。もちろんプログラム関数電卓があればすぐ出せ

るが土方カーブはプログラム関数電卓なしで、暗算でできるのが強みだ。

 

ただ、IA(交角)が大きく、R(曲率=半径)が小さいと土方カーブの誤

差が大きくなるので、計算を用いる方が良いときもある。

IPで曲がり角度IA(後視を反転して時計回りの角度)が決まったら、R

を指定してやれば、BC、EC、MC はすぐ出せる。

 

 

 

 

であるから、IP点から後方、前方にそれぞれTL分だけ距離をとってや

ればBC, ECでありその二点を通る円弧のちょうど真ん中がMCになる。

 

さてこの時、どうやってMC点を出そうか。

トランシットがIP点に座っていたなら、BC方向とEC方向がなす内角

の中間をにらんでそこからの距離を

 

 

で算出されたSL にとればそれがMCである。(位置としては座標値で与

えられているものだろうが…。)

このとき、BCとECを結んだ線分の真ん中の点と、MCを結んだ線分の

距離が中央縦距(ML)というもので、土方カーブの元になる数値だ。

まあ、角度と半径が決まっていればどの部分を切り取ってもいいので、

BC、MC、ECに拘らなくてもMLさえ知れればよいのだが説明に便利

なのでこれによります。.

 

BC、MC、ECはカーブ上の点だが、この三点を結んだだけでは円弧には

ならずただの二等辺三角形である。BC、MC間、および MC、EC間に
あと3点くらいはほしいし、曲線長が長ければもっとあってもよい。細

かく分割すればするほど滑らかなカーブができる。土方カーブを使えば

簡単に出来るのだ。

 

それでは、土方カーブで中間点を出していこう。

BCとECを結んだ中間点からMCまでの距離はMLだった。これを計
算したら仮に80㎝だったとしよう。

 

 

次にBCとMCを結んだ線分の中心から直角に円弧側に80㎝の四分の

一、つまり20㎝ 計った点を①とする。

次に①とBC結びそれの中点から直角に円弧側に今度は20㎝の四分の一

の5㎝の点を取りそれを②とする。同様にMCと①の間にも②が作れる

から、BC,MC間に新たに①が1個と②が2個の計3個の中間点が出来た。

 

同様にMC、EC 間でも①と②を設置してやると計6個の中間点が出来た

ことになる。これを結んでみると見事な円弧になる。もっと円滑にした

いならばこれらを繰り返せばよいだけだから現場的にも非常に楽なのが

分るだろう。

 

曲線部は、道路でも構造物でもBP、MP、EP などの主要なポイントが

所定の位置を正確に占めてれば大体は問題ないが、中間点は見てくれだ

けの問題だが、所定の位置から外れると誰が見てもわかってしまうので

美観と言うとても大事なものを失う。一般の人はいざ知らず、我々が途

中のゆがんだカーブを見たら黙っていられたものじゃない。

 

滑らかさをどこまで求めればよいかは現場の要求で決める。

経験上MLの数値が10~5ミリ程度が限度である。

次が2.5ミリ以下だからだ。

 

 

これらは縦断曲線(バーチカルカーブ)にも応用できる。

 

 

 

縦断曲線は二次放物線で計算しているが、実際の現場で高さのポイン

トを決めるのは単曲線(simple curve)で計算して充分である。

道路工学的には道路の平面曲線は緩和曲線としてクロソイド曲線を使っ

たり縦断曲線に二次放物線を使ったりしているが、どちらも実際に自動

車の運転者がその違いを自覚できる程に影響のあるものではない。

 

クロソイド緩和曲線は軌道のような幅が狭く逸脱できないものは効き目

があるだろうが、自動車道路は幅に余裕があるので意味がない。Rの数

値を少し大きくすればいいだけの話なのだ。

 

さて、いかがだっただろうか。

現場でポールでも使って試しにやってみてほしい。出来上がったカーブ

を見るのは楽しいものだよ。

 

ところで、カーブを作って一番みっともないは円弧の途中が凹んだカー

ブでいわゆる桃尻の曲線だ。中間点が決まった時点で全体を遠くから眺

めて確認してみると、凹んでいるところはすぐわかるから修正してやれ

ばよい。

 

任意の簡単なカーブを作りたい時でもこれを使えば見栄え良くすぐでき

る。そんな時はまず二等辺三角形を作って最初のMLが決めてやれば、

中間点は次々と出来ていくから簡単なのだ。数回やればもうソラで出来

るようになるからね。

 

平面曲線、縦断曲線とにいろいろ使ってみてほしい。

そこからは君の技術になるのだ。